「好きな犬と関わりながら収入を得たい」「初期投資を抑えて副業を始めたい」——そんな方に注目されているのが 犬の散歩代行(ドッグウォーカー) です。特別な店舗や大きな設備がなくても始められ、体力と犬への愛情があれば未経験からでも参入できるのが魅力です。
一方で、「本当に稼げるの?」「資格や届出は必要?」「どうやってお客さんを見つけるの?」という疑問もつきもの。この記事では、市場の背景・料金相場・必要な手続き・現実的な収入の目安・集客方法まで、開業を検討している方が知っておきたいポイントを順番に整理します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。登録要件や手続きは自治体によって異なり、法改正もあり得ます。開業前には必ず管轄の自治体・専門家にご確認ください。
1. なぜ今「犬の散歩代行」が狙い目なのか

犬の数は減っているのに、散歩のニーズは根強い
一般社団法人ペットフード協会の「2024年 全国犬猫飼育実態調査」によると、犬の飼育頭数は 約679.6万頭、猫は 約915.5万頭 と、近年は猫が犬を上回る状況が続いています。犬の頭数だけを見ると減少傾向ですが、それでも国内には約680万頭の犬が暮らしており、散歩というニーズそのものが消えるわけではありません。
むしろ注目すべきは 「散歩させたくてもできない飼い主」の増加 です。背景には次のような事情があります。
- 飼い主の高齢化:体力的に毎日の散歩が負担になり、特に大型犬では困難になりやすい
- 共働き・多忙世帯の増加:朝晩の決まった時間に散歩へ行くのが難しい
- ケガ・病気・出張:一時的に散歩を代わってほしい場面が発生する
犬は散歩で運動とストレス発散をしないと、肥満や生活習慣病のリスクが高まるだけでなく、無駄吠え・噛みつき・自咬(自分の体を舐め続ける・噛む)などの問題行動につながることもあります。「飼い主に代わって犬の健康を守る」サービスとして、散歩代行の社会的な意義は年々高まっています。
初期投資が小さく、参入しやすい
散歩代行は、店舗・在庫・大型設備が基本的に不要です。必要なのは移動手段(自転車・バイク・車)、リード等の基本装備、そして後述する登録・保険です。「リスクを抑えて小さく始め、軌道に乗ったら拡大する」という副業・スモールビジネスに向いた構造になっています。
2. 散歩代行の料金相場

料金は地域・犬のサイズ・散歩時間・交通費の扱いによって変わりますが、1回30分でおおよそ2,000〜3,000円が一つの目安です。犬が大きくなるほど扱いに体力と注意が必要なため、料金は高めに設定されるのが一般的です。
| 犬のサイズ | 目安時間 | 料金相場(1回あたり) |
|---|---|---|
| 小型犬 | 約30分 | 2,000〜2,500円 |
| 中型犬 | 約30分 | 2,500〜2,700円 |
| 大型犬 | 約30分 | 2,800〜3,000円 |
時間延長プラン(45分・60分)を用意したり、複数頭割引・定期利用割引・交通費別途などで料金設計するケースもあります。利用者にはペット保険(賠償・傷害対応)への加入をお願いし、万一の事故・ケガに備える運用が安心です。
料金はあくまで相場です。開業エリアの競合がどの程度の価格帯で提供しているかを必ず調べ、サービス内容(写真報告・GPS共有・雨天対応など)とあわせて設定しましょう。
3. 現実的な収入シミュレーション

「散歩代行で年収1,000万円」といった景気のよい話を目にすることもありますが、それは 家族で分担して頭数を最大化し、稼働日数も多い理想ケースの試算です。まずは現実的な数字でイメージしましょう。
ケースA:副業(週末+早朝中心)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 1回あたり単価 | 2,500円 |
| 1日の頭数 | 4頭 |
| 稼働日数 | 月12日 |
| 月の売上目安 | 約12万円 |
| 年間売上目安 | 約144万円 |
ケースB:専業(平日フル稼働)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 1回あたり単価 | 2,500円 |
| 1日の頭数 | 8頭 |
| 稼働日数 | 月22日 |
| 月の売上目安 | 約44万円 |
| 年間売上目安 | 約528万円 |
ここから 交通費・保険料・チラシやサイト掲載などの集客費・備品費・税金などの経費が差し引かれます。また、1日の頭数を増やすには移動時間の効率化が不可欠で、エリアを絞って近接した依頼を固めることが収益のカギになります。
「散歩だけ」でなく、後述のように 一時預かり・ペットホテル・トリミング送迎・短時間のお世話などを組み合わせると、1顧客あたりの単価と稼働効率を上げやすくなります。
いずれも目安です。実際の収入は地域の需要、リピート率、稼働可能時間によって大きく変わります。最初から大きな数字を狙わず、小さく始めて実績とレビューを積むことをおすすめします。
4. 開業に必要なもの(資格・届出・保険)

① 第一種動物取扱業の登録(最重要)
犬の散歩代行や預かりを 業として反復・継続して行う場合、動物愛護管理法に基づく 第一種動物取扱業の登録が必要です。業種区分は「販売・保管・貸出し・訓練・展示・競りあっせん・譲受飼養」の7つに分かれ、散歩代行や一時預かりは「保管」に該当します。
登録は事業所ごと・業種ごとに、都道府県知事または政令指定都市の長に対して行います。営業を始める前に登録を受ける必要がある点に注意してください。
② 動物取扱責任者の選任
登録には、事業所ごとに常勤の職員から専属の 動物取扱責任者を選任する必要があります。責任者になるには、次のいずれかを満たすことが求められます。
- 営もうとする業種と同一種別で 半年以上の実務経験がある
- 該当する知識・技術を 1年以上教育する学校等を卒業している
- 公平性・専門性のある団体が行う 客観的な試験(資格)で知識・技術の習得を証明できる
選任後は、自治体が実施する 動物取扱責任者研修を年1回以上受講する義務があります。
③ 損害賠償保険(ペット・賠償系)
預かった犬がケガをした・逃げた・第三者に損害を与えた、といった万一に備え、事業者向けの賠償責任保険への加入が安心です。利用者にもペット保険加入を案内するとトラブル時の備えになります。
④ 開業届などの手続き
個人事業として始める場合は、税務署への 開業届の提出を検討します(青色申告の承認申請とあわせて行うと節税面で有利になることがあります)。
| 必要なもの | 概要 | 必須/推奨 |
|---|---|---|
| 第一種動物取扱業(保管)の登録 | 業として行うなら必須。事前登録制 | 必須 |
| 動物取扱責任者の選任 | 実務経験・卒業・資格のいずれか | 必須 |
| 動物取扱責任者研修 | 年1回以上の受講義務 | 必須 |
| 損害賠償責任保険 | 事故・ケガ・逸走などに備える | 強く推奨 |
| 開業届・青色申告承認申請 | 税務上の手続き | 推奨 |
登録要件・必要書類・手数料・施設基準は自治体によって細部が異なります。申請前に必ず管轄の動物愛護センター等に確認してください。
5. 開業までの5ステップ

- 市場・競合の確認:開業エリアの需要、競合の料金・サービス内容を調べる
- 要件を満たす準備:動物取扱責任者の要件(実務経験・卒業・資格)を確認し、不足なら資格取得などで補う
- 第一種動物取扱業の登録申請:管轄自治体へ申請し、登録を受ける
- 保険加入・備品準備:賠償保険、リード・対応グッズ、移動手段、報告用のスマホ環境を整える
- 集客開始:料金表・サービス内容を整え、チラシ・SNS・掲載サイトで告知(→第7章)
6. 副業として無理なく始めるコツ

- 時間帯を絞る:早朝・夕方・週末など、本業と両立できる時間帯から始める
- エリアを狭く設定する:移動時間を減らすほど、同じ稼働時間で多くの頭数をこなせる
- 得意なサイズ・犬種から:まずは扱いやすい小型〜中型犬に絞り、慣れてから対応範囲を広げる
- 報告を丁寧に:散歩中の写真・様子をメッセージで送るだけで満足度とリピート率が大きく変わる
- 記録を残す:散歩ルート・排泄・体調メモを共有すると「健康管理を任せられる」信頼につながる
7. お客さんを見つける集客方法

開業しても、依頼が入らなければ収入はゼロ。散歩代行で最も重要なのは集客です。主な手段を整理します。
| 集客方法 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| チラシ・ポスティング | 地域密着で高齢層にも届く。コストは中程度 | 近隣エリア中心で始めたい人 |
| SNS(Instagram等) | 散歩風景や犬の写真で信頼を可視化。無料で発信できる | 写真・発信が得意な人 |
| Googleビジネスプロフィール | 「地域名+散歩代行」で検索した人に届く | 地域検索を取りたい人 |
| 預け先・お世話のマッチングサイトへの掲載 | 探している飼い主に直接リーチできる | 早く依頼を獲得したい人 |
特に 「預け先・お世話を探している飼い主が集まる場所に掲載する」のは、開業初期の集客で効果的です。散歩代行に加えて 一時預かり・ペットホテル・トレーニングなどを提供する予定があるなら、最初から専用サイトに掲載しておくと、依頼の入り口を増やせます。
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- 動物取扱業 登録番号の確認:登録番号を運営が確認するため、法令準拠を明示でき信頼につながる
- 事前面談・施設見学OK:預ける前に対面で相談できる仕組みで、初回利用の不安を解消しやすい
- 独自レビュー基準:実際の利用者だけが投稿できるレビューで、実績を積めば次の依頼につながる
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8. メリット・デメリットと注意点

メリット
- 初期投資が小さく、未経験・副業から始めやすい
- 犬と関わりながら働ける
- リピート利用が生まれやすく、安定収入につながりやすい
- 一時預かり等への横展開がしやすい
デメリット・注意点
- 早朝・夕方など時間が固定されやすい(飼い主の生活リズムに合わせる必要がある)
- 天候に左右される(雨天・猛暑・極寒時の対応ルールを決めておく)
- 事故・逸走・かみつきのリスクがあり、保険と安全管理が必須
- 体力勝負(特に大型犬・多頭対応)
- 無登録営業は違法。必ず登録を済ませてから営業する
9. よくある質問(FAQ)
Q1. 資格がなくても始められますか? A. 「ドッグウォーカー資格」という国家資格は必須ではありませんが、業として行うなら第一種動物取扱業の登録が必要で、その登録には要件を満たす動物取扱責任者の選任が求められます。要件を満たす手段の一つとして民間資格が役立つ場合があります。
Q2. 自宅で預からず、散歩だけでも登録は必要ですか? A. 散歩代行を反復・継続して業として行う場合は「保管」区分での登録が必要になるのが一般的です。判断に迷う場合は管轄の自治体に確認してください。
Q3. 開業資金はどれくらい必要ですか? A. 店舗を持たない散歩代行なら、登録手数料・保険料・移動手段・備品・集客費などで、数万円〜十数万円程度から始められるケースが多いです(自治体や規模により変動)。
Q4. 本当に「年収1,000万円」稼げますか? A. 理論上は家族での分担・高稼働で到達し得る数字ですが、現実には地域需要・稼働時間・リピート率に大きく左右されます。まずは副業規模で実績とレビューを積み、徐々に拡大するのが堅実です。
Q5. 散歩中に犬がケガをしたらどうなりますか? A. 賠償責任が生じる可能性があるため、事業者向けの賠償保険への加入と、安全管理ルールの徹底が欠かせません。利用者にもペット保険加入を案内しておくと安心です。
Q6. 集客が不安です。最初の依頼はどう取ればいい? A. チラシ・SNS・Googleビジネスプロフィールに加え、飼い主が預け先・お世話先を探すマッチングサイトへの掲載が有効です。ペトミルなら掲載料・手数料無料で始められるので、まずは無料掲載フォームから問い合わせてみるとよいでしょう。
10. まとめ

- 犬の頭数は約680万頭。「散歩させたくてもできない飼い主」のニーズが散歩代行を支えている
- 料金相場は 1回30分で2,000〜3,000円。サイズや時間で設計する
- 収入は副業で 月10万円前後、専業フル稼働で 月40万円超も狙えるが、経費・稼働効率次第
- 業として行うなら 第一種動物取扱業(保管)の登録と動物取扱責任者の選任が必須。保険加入も強く推奨
- 成否を分けるのは 集客。チラシ・SNSに加え、飼い主が探す場所に掲載するのが近道
犬の散歩代行は、初期投資を抑えて始められる将来性のあるスモールビジネスです。「正しく登録し、安全に運営し、見つけてもらえる場所を持つ」——この3つを押さえれば、未経験からでも着実に依頼を増やしていけます。
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参考・出典
- 一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」 https://petfood.or.jp/data-chart/
- 環境省「第一種動物取扱業者の規制」 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/trader.html
- 東京都動物愛護相談センター「第一種動物取扱業の登録について/動物取扱責任者について」 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/douso/dt_gyou/dt_gyou
- 記事着想元:『眠れなくなるほど面白い 図解 経済とお金の話』(神樹兵輔 著)